なぜ私たちは眠らなければならないのか?スタンフォード教授と睡眠科学の第一人者が語る最新知見




「睡眠は贅沢ではなく、生存に必須の機能である」──これはスタンフォード大学のアンドリュー・フーバーマン博士と、世界的ベストセラー『Why We Sleep』の著者でありUCバークレー睡眠科学センター所長のマシュー・ウォーカー博士が語った言葉です。

最新の科学は、睡眠不足が心身に与える影響を次々と明らかにしています。集中力の低下、免疫力の低下、感情の不安定化、さらにはアルツハイマー病などの神経変性疾患リスクの上昇まで──。

この記事では、二人の対話をもとに「なぜ睡眠が重要なのか」「睡眠中に脳と体で何が起こっているのか」「どうすれば質の高い睡眠を手に入れられるのか」を徹底解説します。

目次

1. 睡眠の正体とは?二大タイプとその役割

人間の睡眠は大きく 「ノンレム睡眠」「レム睡眠」 に分かれます。

  • ノンレム睡眠(Non-REM)

    • ステージ1〜4に分類

    • ステージ3・4は「深い睡眠(Slow-wave sleep)」

    • 免疫機能強化、血圧調整、代謝の安定、記憶の固定などに不可欠

  • レム睡眠(REM)

    • 急速眼球運動が特徴

    • 主に夢を見る段階

    • 感情処理や創造性に重要

    • 脳の一部は起きているとき以上に活発に活動

睡眠は約 90分周期 でノンレムとレムが切り替わり、夜の前半は深いノンレム睡眠が多く、後半はレム睡眠が優勢になるというリズムを持っています。


2. 睡眠不足がもたらす深刻な影響

たった1〜2時間の睡眠不足でも脳と体に大きな影響を与えます。

  • 記憶・学習能力の低下
    深いノンレム睡眠が不足すると、新しい情報を長期記憶に移行できず「学んでもすぐ忘れる」状態に。

  • 免疫力の低下
    自然免疫細胞(ナチュラルキラー細胞)が減少し、風邪や感染症にかかりやすくなる。

  • 代謝異常と糖尿病リスク
    深い睡眠が不足するとインスリン感受性が低下し、血糖値が正常にコントロールできなくなる。

  • 認知症リスクの上昇
    睡眠中に脳は「老廃物を洗い流す」働きをしており、特にアルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドやタウタンパクの蓄積を防ぐ。


3. 睡眠の「質」を決める4大要素:QQRT

ウォーカー博士は、良質な睡眠を測る指標として QQRT を提唱しています。

  1. Quality(質):深いノンレム睡眠と十分なレム睡眠を含むか

  2. Quantity(量):成人は7〜9時間が目安

  3. Regularity(規則性):毎日同じ時間に寝起きするか

  4. Timing(タイミング):体内時計に沿った時間帯に眠れているか

つまり「何時間寝たか」だけでなく、いつ・どのように眠ったかが健康を大きく左右するのです。


4. 睡眠を改善する具体的な方法

科学的に実証された「よく眠るための工夫」は以下の通りです。

  • 光のコントロール
    朝は太陽光を浴び、夜は強い光(特にブルーライト)を避ける。

  • 温度調整
    入眠には体温が1〜3℃下がる必要があるため、寝室は涼しく保つ。

  • カフェイン・アルコールの制限
    カフェインは6〜8時間作用し、深い睡眠を妨げる。アルコールは眠りを浅くし覚醒を増やす。

  • 規則的なリズム
    平日も休日も同じ時間に寝起きすることで体内時計を安定させる。

  • 就寝前の習慣
    読書や瞑想などでリラックスし、「ベッド=睡眠」の条件付けを行う。


5. 睡眠と「夢」の役割

夢を見るのは主にレム睡眠中ですが、実は全ての睡眠段階で「夢様体験」が起こり得ます。

  • レム睡眠の夢:感情処理・創造的問題解決に貢献

  • ノンレム睡眠の夢:現実的で記憶の整理に関連

さらに「明晰夢(夢の中で夢だと気づく状態)」は、感情のコントロールやトラウマ治療に応用される可能性もあります。


結論:睡眠は「一日のリセットボタン」

私たちの脳と体は、毎晩の睡眠によって再構築され、翌日の集中力・感情・免疫力が決まります。
つまり、**よく眠ることは「最高の投資」**であり、仕事のパフォーマンスから長寿、心の健康にまで直結しているのです。

フーバーマン博士とウォーカー博士が強調するのはシンプルです。

✅ 量と質を確保する(7〜9時間、深いノンレム+十分なレム)
✅ 規則正しく眠る(毎日同じ時間に寝起き)
✅ 光・温度・習慣を整えて「睡眠に最適な環境」を作る

今日からできる小さな工夫の積み重ねが、未来の健康と幸福を大きく左右します。